帯電防止作業服に求められる3つの規定とは?着用が必要な理由や着用すべき職種をご紹介!

作業着

静電気を甘く見てはいませんか?バチッとした不快感だけでなく、火災や爆発、精密機器の故障など、作業現場では大きな事故に繋がる危険性があります。

本記事では、静電気の発生メカニズムやリスク、そして安全対策の要となる「帯電防止作業服」について詳しく解説します。また、JIS規格に基づいた選び方から、着用が必須となる職種もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみください。

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帯電防止作業服に求められる3つの規定とは?

帯電防止作業服に求められる3つの規定とは?

帯電防止作業服には、JIS T 8118規格に基づき、主に3つの規定が求められます。これらの規定を満たすことで、静電気の発生を抑制し、安全な作業環境を確保することができます。

1.導電性繊維が入っている

作業服の生地には、導電性繊維を等間隔で混入する必要があります。導電性繊維とは、電気を通す性質を持つ特殊な繊維のことです。

この繊維を生地に織り込むことで、静電気が発生しにくい構造になっています。素材の帯電電荷量は7μC/㎡以下である必要があります。

参考:帯電性試験 衣料品(JIS L 1094、JIS T 8118) | 試験業務(試験分野別) | 品質試験・検査ならQTEC

2.ファスナー・ボタンは樹脂製のものを使用する

ファスナーやボタンなどの付属品には、金属製のものは使用できません。金属は静電気を集めやすい性質があるため、代わりに樹脂製の付属品を使用することで静電気の蓄積を防ぎます。

どうしても金属製付属品を使用する必要がある場合は、着用時に表面に露出しない設計にする必要があります。

3.裏地は表面積の20%以内にする

帯電防止作業服の裏地は、静電気対策として、表面積の20%以内に制限されています。裏地の素材は、一般的にポリエステルやナイロンなどの合成繊維が用いられます。

これらの素材は、摩擦によって静電気を帯びやすい性質があり、裏地の面積を制限することで静電気の発生を抑制する効果が期待されます。JIS T 8118規格では、帯電防止作業服の裏地の面積について、以下の通り規定されています。

項目規定
裏地の面積表面積の20%以内

裏地の面積が大きすぎると、静電気が発生しやすくなり、火災や爆発の危険性が高まります。また、静電気による電子機器の誤動作やデータの消失などのトラブルも引き起こす可能性があります。

したがって、帯電防止作業服を選ぶ際には、裏地の面積が20%以内であることを確認することが重要です。

参考:JIST8118:2001 静電気帯電防止作業服

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帯電防止作業服の着用が必要な理由

帯電防止作業服の着用が必要な理由

静電気は、私たちの日常生活でもしばしば発生する現象です。冬場にドアノブに触れた際にバチッと感じたり、衣類がまとわりついたりするのも静電気の仕業です。このような静電気は、作業現場では大きな危険につながる可能性があります。

火災や爆発を防ぐため

静電気は物質同士の摩擦によって電子の移動が起こり、プラスとマイナスの電荷を帯びた状態になることで発生します。そして、帯電した物体同士が接触または近接すると、静電気が放電されます。

静電気の放電は、瞬間的に高電圧・高電流を発生させるため、火花が散ることがあるのです。この火花が可燃性物質に引火すると、火災や爆発事故につながる危険性があります。

機械や電子機器の故障を防ぐため

静電気は、電子機器の故障を招く可能性があるため、帯電防止作業服の着用は重要です。静電気によるトラブルは以下の通りです。

静電気による影響想定される結果
電子部品への損傷機器の故障、誤動作
データの損失や破損情報の消失、システム障害
製造工程への悪影響製品不良、生産性低下

特に、静電気の影響を受けやすい電子部品を扱う作業現場では、帯電防止作業服の着用が必須です。

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帯電防止作業服を着用すべき職種

帯電防止作業服を着用すべき職種

静電気による事故のリスクを低減するために、帯電防止作業服の着用が推奨される、または必須とされる職種があります。主な職種とその理由について解説します。

電力会社や発電所

電力会社や発電所は高電圧の電気機器や装置が多く設置されており、静電気による火災や爆発の危険性があります。これは、静電気の放電による火花が可燃性ガスや物質に引火する可能性があるためです。

また、電気機器の誤作動や故障を引き起こす危険性もあります。静電気による微小な電流でも、精密な電子機器に影響を及ぼす可能性があるためです。

そのため、電力会社や発電所では、作業員の安全と設備の保護のため、帯電防止作業服の着用が必須です。帯電防止作業服は体への静電気の帯電を防ぎ、静電気放電によるリスクを軽減します。

電子工場や半導体製造工場

電子工場や半導体製造工場では、静電気による製品への影響が非常に大きく、帯電防止作業服の着用が必須です。特に、半導体は静電気の影響を受けやすく、ごく微量の静電気でも破壊されることがあります。

そのため、これらの工場では、静電気対策として帯電防止作業服の着用が不可欠です。電子工場や半導体製造工場で働く作業者は、帯電防止作業服を着用することで、これらのリスクを軽減し、安全な作業環境を確保できます。

化学工場や石油プラント

化学工場では様々な化学物質を製造・加工しています。これらの物質の中には、静電気によって引火または爆発するものがあります。

また、石油プラントでは原油の精製や石油製品の製造を行っています。これらの工程でも、静電気による火災や爆発のリスクがあります。

よって、化学工場や石油プラントでは、帯電防止作業服の着用は必須です。作業員の安全を守るためにも、適切な作業服の着用を徹底しなければなりません。

印刷工場

印刷工場も静電気が発生しやすい環境です。印刷工場で発生する静電気によるトラブル例として次が挙げられます。

トラブル内容
インクの飛散静電気によってインクが用紙以外に飛散し、印刷物が汚れてしまう。
用紙の汚れ静電気によって空気中のホコリやゴミが用紙に付着し、印刷不良の原因となる。
用紙の吸着静電気によって用紙同士が吸着し、印刷機の動作不良や用紙詰まりを引き起こす。
感電静電気の放電によって作業者が感電し、怪我をする可能性がある。

これらのトラブルを避けるために、印刷工場では帯電防止作業服の着用が推奨されています。

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帯電防止作業服でよくある3つの質問

帯電防止作業服でよくある3つの質問

静電気や帯電防止作業服に関して、よくある質問をまとめました。JIS規格や静電気の発生原理、帯電防止作業服の分類について解説します。

質問1.JIS-T8118とは?

JIS-T8118とは、静電気帯電防止作業服の規格を定めた日本工業規格です。この規格では作業服に使用する生地の導電性、裏地の面積、ファスナーやボタンの素材など、静電気を抑えるための様々な基準が設けられています。

基準を満たした作業服は、静電気による火災や爆発の危険性を低減するのに役立ちます。

参考:帯電性試験 衣料品(JIS L 1094、JIS T 8118) | 試験業務(試験分野別) | 品質試験・検査ならQTEC

質問2.静電気が発生する原理とは?

静電気は物質同士の接触や摩擦によって発生します。具体的には、異なる物質が接触すると、一方から他方へ電子が移動して電荷のバランスが崩れます。

この状態が静電気帯電です。その後、帯電した物質が他の物質に触れると蓄積された電荷が一気に流れ、静電気放電が起こります。

質問3.静電気帯電防止作業服の分類は?

静電気帯電防止作業服は、主にその性能によって分類されます。日本産業規格(JIS T 8118)では、帯電防止作業服の性能を「クラス1」「クラス2」「クラス3」の3つの等級に分類しています。

等級表面抵抗率(Ω)説明適合例
クラス110^6Ω以上10^11Ω以下帯電防止効果が最も高く、静電気によるリスクが高い環境に最適です。製油所、化学工場、火薬工場など
クラス210^7Ω以上10^10Ω以下クラス1とクラス3の中間の性能で、一般的な静電気対策に適しています。電子部品工場、印刷工場、塗装工場など
クラス310^8Ω以上10^9Ω以下帯電防止効果は最も低いですが、静電気によるリスクが低い環境であれば十分な性能です。一般的な工場、オフィスなど

クラス1は最も帯電防止効果が高く、静電気による爆発や火災の危険性が高い環境での作業に適しています。一方、クラス3は帯電防止効果は低いですが、一般的なオフィスや工場など、静電気によるリスクが低い環境での使用に適しています。

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まとめ

まとめ

静電気は目に見えないものの、時に大きな影響を与える現象です。冬にドアノブに触れた時の不快な痛みだけでなく、工場などでは火災や爆発、精密機器の故障といった深刻な事故に繋がる危険性も潜んでいます。

なお、静電気のリスクが高い職場では、帯電防止作業服の着用は安全確保に不可欠です。電力会社や発電所、電子工場、化学工場など、静電気による事故が大きな損害に繋がる可能性のある現場では、作業員の安全を守るためにも、帯電防止作業服の着用を徹底しなければなりません。

静電気への理解を深め、適切な対策を講じることで、安全で安心な職場環境を築きましょう。

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